Athlon [ Thunderbird ] , Duron [ Spitfire ]

ソケットA版のCPUとして最初にリリースされたサンダーバード・コアのアスロン、L2cacheが削減されたスピットファイヤー・コアのデュロンでは すべて起動倍率の変更が可能ですが、オーバークロック機能が実装されていないマザーに対して、これを改造によって可能にする方法を全5ページで紹介しています。
製造週によってはL1ブリッジがカットされていますので、L1クローズが必要な場合もあります。

  1. 起動倍率 : デフォルト倍率の固定方法はどうなっているのか、また、それを変えるには。
  2. コア電圧 : コア電圧はどのようにして設定されているのか、それを手動で設定するには。
  3. Athlon1G : Athlon1G(100*10)なら、パターンカットなしに倍率を変更できる。
  4. FSB133 : FSB100用のCPUを、FSB133 対応マザーで使うためには...。
  5. Mobile : Mobile Duron 800はSpitfireコアとしては最高の出来のようだ。

公開:2000年10月 / 最終更新:2002年03月

これらはAthlonではThunderbird, DuronではSpitfireコアを対象にしています。
Mobile Athlon4, Athlon MP, Athlon XP [Paromino], Duron [Morgan]にはあてはまりません。
より新しいコアのプロセッサは [ Paromino ] 、 [ Thoroughbred ] 、 [ Barton ] があります。
製品の区別については、CPUガイド 及び OPN を参照してください。

一度はお読みください:改造について


Duron Spitfire 起動倍率

デフォルト倍率の固定方法はどうなっているのか、また、それを変えるには。

このページはDuronではSpitfire, AthlonではThunderbirdコアを対象にしています。
PalominoコアのMobile Athlon4, Athlon MP, Athlon XP 及び
MorganコアのDuron、Mobile Duronにはあてはまりません。

AMD Duron 700 [ D700 AST1B ]

Duron700とGIGABYTEの『GA-7ZX』を使って改造を試みたところ、起動倍率を可変にすることができました。同様の改造が他の倍率変更をサポートしていないマザーでも可能なはずです。
では、その一般的な改造方法から御覧下さい。

Mobile Duron
ここで重要なのはDuron/Athlonの表面にある金色の小さなパターン(以下ブリッジ)で、定格設定はこれにより固定されています。
オーバークロックを有効にするには、ブリッジL1を、すべてクローズにすることから始めます。(右コラム参照)

2000年9〜10月作成 


Spitfireコアを採用したプロセッサの起動倍率は、CPU表面のブリッジL4、L3で決められているようです。

このブリッジは2個1組として使われ、1kの抵抗を通して一方が0Vに、もう一方がVCC_COREに接続されています
さらに、どちらか一方のブリッジがオープンされ、クローズ側のブリッジが0VかVCC_COREかのどちらに接続されているかを、コア内部の回路が倍率IDとして認識することで、デフォルト倍率を設定しているようです。

Spitfireコアのデフォルト倍率設定回路(推定)

Multiplier control

[重要]
実際の回路はこのように単純ではなく、Multiplier Control回路にも電流が流れているようです、 これはBP_FIDピンの電圧がなにも接続していない状態でも0.3〜0.5V程度になっている(数百オームでプルダウンされているに状態に似ている)ことから推定できます。
また、この図はDuron700のブリッジ解析を元に書き起こしたもので、あくまで推定です。AMDから公表されている資料ではありません。

起動倍率を可変にするには、CPUのBP_FID pinにスイッチなどを接続してデフォルトの倍率設定を乗っ取ることと、FID設定をCPUに替わってスイッチ(以下SW)で設定した値をマザーに渡すことにより可能となります。
またコア電圧が自動設定のマザーボードでは、これも設定SWを付加します。

oc

BP_FID - CPU起動倍率変更設定 -

BP_FIDピンは、AMD のデータシートでは無接続となっていますが、実際にはL1を通ってL3、L4に内部接続されています。 そこでこのピンにスイッチ(以下SW)などを付加し、電圧を加えることでL3、L4での固定倍率を無効にし、それを乗っ取ることが可能となります。

p3
[BP_FID] L1〜L4ブリッジの内部接続の推定と, 追加するBP_FID設定スイッチ

SWで加える電圧は、ID設定(0)=GND,0vID設定(1)=Vccになるようにします。 ここでは、Vccにはコア電圧であるVcc_COREを使用しました。
倍率設定は 、FIDと同じ右の論値表を参照します。


FID - マザー動作倍率設定 -

FID信号は、CPUの定格倍率をマザーに引き渡すもので、これを受取ったマザー側のチップが、CPUの動作に必要なクロックを生成し供給します。
FIDはブリッジL6クローズ(0)=GND,0vオープン(1)=無接続の状態の設定が,そのままFIDピンに出力されているようです。

そこで、このFID信号のパターンを途中でカットし、その代用としてFID-SWで設定した値をマザー側に渡すことで、自由にこの信号を設定できるようにします。

p2
[FID] L6ブリッジの内部接続の推定と, その替わりとなるFID設定スイッチ

SWはブリッジ同様、ID設定(0)=GND,0vID設定(1)=開放になるようにします。 ここで、SWを開放したときに、論理1となるのは、この信号をマザーボード側でプルアップ(抵抗などを通してVccに接続)して使用しているからです。

また、図でブリッジオープンを倍率有効と考え、その部分に記入してある?xが有効倍率とすれば。3+有効倍率の合計としても求められます。
(ただしFID2,FID3ともにクローズの場合は、11+有効倍率の合計

* またはAMD のデータシート23802を参照




data sources

AMD Duron Processor Model 3 Data Sheet 23802
http://www.amd.com/products/cpg/duron/techdocs/index.html


Thanks

JOHN CARCICH'S HOME PAGE: Overclocking SocketA Duron....
http://www.beachlink.com/candjac/index.htm

Golden bridges

L1からL7まであります、私は簡単にブリッジと書いていますが、ゴールデンブリッジとか黄金橋とかいわれているようです。

ブリッジによる設定の詳細
( 起動倍率、コア電圧 )

L1クローズ

現在のものは、ほとんどL1オープンですが、HBの鉛筆や導電性のペンでそれぞれをクローズする方法が知られています。私は熱線補修材を使いましたが、起動できない倍率があり失敗。シンナーで拭き取りやりなおしました。

三菱の安いHBの鉛筆でやってみたところ、すんなり成功しました。 表面保護を考え、その上から熱線補修材を塗りましたが、鉛筆に負けるなんて、なんてことでしょう。

このときクローズに成功したL1の抵抗値を計ってみましが、1〜3.3オームの範囲で、意外に低い抵抗値となっていました。
というわけで、私は鉛筆に1票!

失敗の原因は熱線補修材の使い方にあったようです、溶剤と銀色の粉体がよく混ざるように、いったん硬い紙の上などに取り出して、つまようじなどでかき混ぜてから使用すれば、鉛筆と併用する必要もありません。

L2、L5

手許のDuronでは両方ともクローズですが、L2,L5についての情報はもっておりません
一度は切ってみたいものだが......

起動倍率設定ID[3:0]


FID , BP_FID 倍率設定
倍率I D
[3][2][1][0]
5.0x0100
5.5x0101
6.0x0110
6.5x0111
7.0x1000
7.5x1001
8.0x1010
8.5x1011
9.0x1100
9.5x1101
10.0x1110
10.5x1111
11.0x0000
11.5x0001
12.0x0010
12.5*0011

0=Ov , 1=Vcc

FID とBP_FIDの設定は、必ず同じ倍率に設定します。

* 12.5倍以上の設定

BP_FID

BP_FID
BP_FIDは、GNDかVccを接続するわけですがこれを2個のSWを使って実現する場合 設定をうっかりするとGND-Vcc間をショートさせてしまうことになり、電流制限用に100オームをいれました。


BP_FIDピンは、なにかの都合で、 CPUコアに対して自由に動作クロックを設定するために設けられた、テストピンのようなものなのでしょう。


FID - パターンカット -

FID信号のパターンカットどうしてもしたくない場合。
L6のブリッジを全部オープンにするか、CPUのFIDピンをカットすれば良いはずです。
またはAthlon1Gをごらんください。



2000/10/18 作成

2001/3/25 一部修正
ID設定表の見方の記述に間違いがありましたので訂正するとともに、わかりやすい表現に書き直しました

2001/11/28修正

2002/03/10追加
Workshopのspitfireの倍率回路など