Mobile Duron800, Spitfireコア

モバイルデュロン800MHzを手に入れました。主力製品が1G以上となった今、わざわざこのCPUを買わなくてもいいのに、
つい安かったので購入。 Spitfireの最終版とも言えるこのコアの実力は!(2001年12月)

ここで単にDuronMobile Duronと書いている場合はSpitfireコア版のことを指しています。
より新しいMorganコアのMobile Duronは、L2 Cacheの容量を除けば機能的にはPalominoコアを使ったMobile Athlon4と同じと考えて良いと思います。この場合Athlon [Palomino]のページを御覧下さい。

Mobile Duron 800 [ D800 AVS1B ]

Mobile DuronとDuronは基本的に同じ物のようです、コアの表面に書かれている表記がDuron800ではD800AUT1Bと書かれているのに対しMobile Duronは、これがD800AVS1Bとなっています。 このマーキングからわかる違いは、コア電圧の違いと、ダイ温度定格の違いです。
Duron D800AUT1Bでは1.6V、90度。
Mobile Duron D800AVS1Bでは1.4V、95度。(*1)

ところがMobile Duron表面のブリッジL7から読めるVIDは1.55Vを示しており、通常のマザーでは1.55Vのコア電圧で動作するはずです。 初期のDuron750(D750AST1B)などでも1.50Vなのに、1.55Vでモバイル版というのも不自然な話しですから、これにはちゃんとした理由があります。

*1

Mobile Duronのコア電圧の表記が1.4Vと書きましたが、これはMobile Athlon 4 Model 6のデータシートのコア電圧表記と同じと仮定した場合です。Mobile Duron(Spitfire)のデータシートは残念ながら手に入りませんでした。

*2

Mobile版には「PowerNow!」というソフトウエアからコア電圧と動作クロックを変える省電力用の機能が載っている...と思ったのですが、過去の記事を調べてみたところ、
SpitfireベースのMobile DuronはDuronプロセッサの派生品で、より低電圧で動作し消費電力も低くなっているが、「PowerNow!」は搭載していないということがわかりました。つまり通常のDuronなんですね。

なお左の写真のコアの文字部分は写真にうまく写らなかったので修正を加えました。

Mobile Duron 800 オーバークロックテスト

L1をクローズし定格の800MHzでスタート、Duronとして普通に起動しました。 コア電圧は、やはり1.55Vがデフォルトとして認識されています。
さっそくコア電圧を1.75Vに上げテストしてみると1.1G、1.15Gと順調に起動し1.2Gで初めて起動に失敗、 FSBを変えて試してみると1184MHz(Vcore=1.75) まで動作させることができました。

WCPUIDで見てみると、Mobile Duron 800は製造週が新しいこともあり、Stepping IDが0から1に変わっていました。


Mobile Duron 800 低いコア電圧での動作

コア電圧をほぼ定格の1.425Vに下げテストしてみると、なんと1GHz迄クロックをあげても問題なく動作しました。さらに1.30Vでも900MHzまで起動することを確認できました。このことからもコア電圧のマーキングは V=1.4Vと考えていいようです。

Spitfireコアでは、1Gで常用できそうなコアはあまりありませんでしたが、今回のMobile duron800では1Gをあっさりとマークという、Spitfireとしては最も優秀と思える成績です、コア電圧しだいで1G常用も可能でしょう。

Duronは600Mhzからスタートし、900〜1G程度までオーバークロックできることで人気がありましたが、その後Athlonの早さの前に人気は急降下してしまいました。950Mhzまで製品が出荷されたはずですから、1Gくらいが限界だったのでしょう。

2001年末の現在、DuronはMorganコアを採用したものに移行し、1G以上の動作が当然といった感じになり、Mobile duron800(Spitfire)を使うメリットは少なくなってしまいました。

というわけで、Duron Spitfire 終了!



テスト状況

マザーボード:
MSI K7TPro2A
(KT-133、FSB100)

Vcore可変範囲:
0.2V、0.025単位

ヒートシンク:
KANIE Hedgehog-238S
(但し改造で8cm低速ファンを付けてあるため標準よりも冷却能力は劣っています)

動作確認はπ104万桁完走を条件にしました。


コア電圧の変更

K7TPro2Aではコア電圧の調整範囲が狭く1.75vまでしか上げられませんでした。
また1.40vのテストがしたかったのですがBIOSではなぜか1.40vの項目がなく1.425にしか変更できなかったのです

1.75v以上や1.3V以下はマザーに手を加えないと無理ですが,Spitfireコアではまあこの辺にしておきます。

Mobile Duron、Mobile Athlon4 VIDブリッジ

Spitfire版Mobile DuronのVIDブリッジは、Athlon/Duron(Thunderbird/Spitfire)と同じL7です。より新しい PalominoコアのMobile Athlon4ではL11がVIDブリッジです。

VIDの表記は、VID[4:0]と書いた場合、左からVID[4],VID[3],VID[2],VID[1],VID[0]の順番に並べた場合をまとめて書いていると解釈してください。

ブリッジのIDは、△印をID0としていますが、Mobile Athlon4 900ではVIDブリッジのIDを読む方向に問題があるかもしれません。


Mobile Duron、Mobile Athlon4 コア電圧コード

デスクトップ版とモバイル版ではコア電圧のIDコードの定義が違います、このVIDコードはCPUからマザーボードのコアボルテージレギュレータに渡される値ですから、通常のマザーボードではモバイル版CPUを使った場合でも、常にデスクトップ版用のVIDコードとみなされてコア電圧が生成されます。

Desktop&Mobile(Athlon/Duron) VID[4:0] Code
VIDVCC_CORE (V)VIDVCC_CORE (V)
[4:0]DesktopMobile[4:0]DesktopMobile
CCCCC1.8502.000:CCCC1.4501.275
CCCC:1.8251.950:CCC:1.4251.250
CCC:C1.800(N)1.900:CC:C1.4001.225
CCC::1.7751.850:CC::1.3751.200
CC:CC1.750(M)1.800:C:CC1.3501.175
CC:C:1.7251.750:C:C:1.3251.150
CC::C1.700(P)1.700:C::C1.3001.125
CC:::1.6751.650:C:::1.2751.100
C:CCC1.6501.600::CCC1.2501.075
C:CC:1.6251.550::CC:1.2251.050
C:C:C1.600(U)1.500::C:C1.2001.025
C:C::1.5751.450(Q)::C::1.1751.000
C::CC1.5501.400(V):::CC1.1500.975
C::C:1.5251.350:::C:1.1250.950
C:::C1.500(S)1.300::::C1.1000.925
C::::1.475 - :::::No CPUShutdown
C がブリッジクローズ、論理0、該当するVIDピン電圧は0V
: がブリッジオープン、論理1、該当するVIDピン電圧はVcc



VID

AMDのデータシートを調べてみたところ、モバイルデュロン(Morgan)、モバイルアスロン4のコア電圧コードはデスクトップ版と違っていると書かれていました。
そのため通常のマザーにモバイル版を載せた場合、定格1.40vのコア電圧コードは1.55Vのコードとして誤認識されてしまいます。

コア電圧の調整範囲の狭いマザーでもデフォルトでコア電圧が高めに認識されるわけですから、偶然にも?オーバークロックには都合の良い仕様になっています。

コア電圧を通常のDuronと同じ1.6Vにして、倍率10xの1G程度ならたぶん動作してくれるでしょう。


data sources
AMD http://www.amd.com/
Mobile AMD Athlon 4 Processor Model 6 Data Sheet 24319.pdf
Mobile AMD Duron Processor Model 7 Data Sheet 24068.pdf
改訂記録

2001/12/22 VIDブリッジの図を追加

2001/12/10 全文を見直し

2001/12/09 コア電圧コード表を修正

2001/12/07 作成