SDカードの転送速度の表示とは
SDカードで60xとか133xとか書かれている製品の「スピード表示」は、何を基準に比較しているのか良くわかりません...そこで調べました。
SDカード (SDメモリーカード)
私はCanonのデジタルビデオカメラ FVM200を持っています。このDVカメラで、静止画撮影はSDカード(SDメモリーカード)に記録されますが、Canonのマニュアルには 書き込みスピードが遅いSDカードをお使いの場合や、撮影時のカメラ設定によっては撮影スピードが遅くなることがあります
と書かれています。しかし「遅い」とはどれくらいの転送速度なのかが書いてありません...これでは手持ちのSDカードに問題がないのかどうか心配になります。
SDカード(Kingston 512MB)
販売店でSDカードを眺めてみると、133xとか転送速度20MB/s、あるいは「速度表記なし」のSDカードが並んでいました。しかし何を基準にしたX倍率なのか、どんな条件での転送速度なのかが書かれていないなど、表記方法がまちまちで比較できません。これではCanonが速度を具体的に書けなかったのも仕方がない。
調べてみると、「X倍率は初期に発売されたSDカードに対する速度比率」とかではなく...
XX倍速の表示とは何?
X倍速の表示は、LexarがCFカード(コンパクトフラッシュ)において最初に導入した速度の表記の方法で、その基準は等速CD-ROMドライブの転送速度である150KB/秒です。そして、それに対する最大データ転送速度の比率、おもに理論値を示しています。
メモリモジュール大手のKingstonで調べてみると以下の説明がありました。これでようやく納得!
- Xの値は150キロバイト/秒(150 KB/sec)
- 50Xの場合: 50X150KB/sec = 7.5MB/sec
重要なのは『 X倍速の表示はLexarが導入した速度表記のルールであって、規格ではない 』ということ。
Lexar(レキサー・メディア社)
レキサーメディアは、アメリカのフラッシュメモリの製造企業で、NAND型フラッシュメモリの多くの特許を保有し、Olympus、Samsung Electronics、SanDisk、ソニーなどに技術をライセンスしています。
2006年6月にMicron Technologyが買収し、現在はMicronの100%子会社。MicronではLexarのNANDコントローラ/システムデザイン技術、ブランド力、販売力を自社の技術と組み合わせ、NANDフラッシュ事業の強化を図る方針とのこと。 lexarmedia.co.jp
SDカードの速度表記の違い
販売されているSDカードのスピード表記は、その基準が「まちまち」なので、そのまま比較はできませんが、 おおまかに分けると以下の3種類のグループにわけられます。
X倍速で速度を表示
「書き込み時」の最大転送速度をX倍速で表記しているLexar、Kingston
書き込み時の転送速度でX倍率を表示 | ||||
ベンダー | 製品 | 速度の表記 | 読み出し | 書き込み |
Lexar | Platinum2 | 60x | - | 9MB/s |
Lexar | Professional | 133x | - | 20MB/s |
Kingston | SD/512FE | - | 5MB/s | 1.5MB/s |
Kingston | SD/512-SFE | 50x | 8.2MB/s | 7.7MB/s |
Kingston | SD/1GB-UFE | 133x | 23MB/s | 20MB/s |
ところが、別の表記方法を使うと...
規格ではないので、「レキサーの表記ルール」に似た表示で「読み出し時の転送速度でX倍速の表示をする」ということもできるわけです。この場合、一般に「読み出し速度のほうが早い」ので、同じ製品を高性能に表記できることになる。
...そんな 営業上手なベンダー もあるだろうと思って調べてみたら、やはりありました!
X倍速で速度を表示 ..でも読み出し時
「読み出し時」の最大転送速度をX倍速で表記しているのは、以下のベンダーなど多数
読み出し時の転送速度でX倍率を表示 | ||||
ベンダー | 製品 | 速度の表記 | 読み出し | 書き込み |
Transcend | TS1GSD80 | 80X | 12MB/s | 10.7MB/s |
グリーンハウス | GH-SDC1GX | 150X | 22.5MB/s | - |
TwinMOS | FSD1GU-150X | 150X | 22.5MB/s | 17.0MB/s |
a-data | TURBO SD 1G | 150X | 22.5MB/s | 15MB/s |
調べてみたら...読み出し時の転送速度でX倍速の表示をしている会社のほうが多く、しかも「理論値、最大値」ですから、実態とは随分違うかもしれません。たとえば上の表の150X製品よりも、実はKingstonの133x製品のほうが高速という困ったことも起ります。
これは 2008/11に690円で買ったKingmax KD-SD2GBです。ベンチでは「連続読み出しは20MB/s」と高速なのに、「連続書き込みは6MB/s」と遅い製品。仮に、このSDに「高速133x」などと記載してあったとしても不思議ではないことになる。ただし、この「Kingmax」は何も速度表記がなくフェアな製品でした。blog:#最近のSDカードは読み出しだけは速いのか?
X倍速の表示は鵜のみにしない!
このように、レキサー・メディアと似た「X倍速表示」を記載しているにもかかわらず、「速度の条件が明確に表示されているわけではない」というのが現状です。しかし、これらを混同して比較してしまう方も多いと思います。X倍速の表示は規格ではないので、もし、これらのベンダーにこの件を質問したとしても、『当社のX倍速の表記は独自のもので、レキサーの表記方法とは関係ありません』と言われれば、それまでです。
X倍速ではなく、転送速度を数値で表示
それでは、SDカード開発メーカーや、PCの周辺機器を扱っている販売会社はどうかというと...こちらも転送速度の条件をわかりやすく表示しているとは言えません。
「製品のスピード・カテゴリーとデータ転送速度を併記」しているベンダーは以下。
X倍率を表示していない | ||||
ベンダー | 製品 | 速度の表記 | 読み出し | 書き込み |
東芝 | SD-FA001GT | 高速SD | - | 10MB/s |
Panasonic | RP-SD256BJ1A | HIGH SPEED | - | *2MB/s |
Panasonic | RP-SDR01GJ1A | HIGH SPEED Class2 | - | *5MB/s |
Panasonic | RP-SDK01GJ1A | PRO HIGH SPEED | - | *20MB/s |
SanDisk | SDSDX3-1024-903 | ExtremeIII | 20MB/s以上 | 20MB/s以上 |
SanDisk | SDSDH-1024-903 | SanDisk UltraII | 10MB/s以上 | 9MB/s以上 |
バッファロー | RSDC-G1G | 高速モデル | 20MB/s(21MB/s) | 14MB/s |
I/Oデータ | SDP-1G | Super High Speed | 20MB/s | - |
プリンストン | PSDS2-1G | Xpert plus | 20MB/s | - |
*Panasonicはデータ転送速度としか書かれていないので、書き込みレートか読み出しレートかはっきりしませんが、おそらく書き込みだろうと推定しました。
「ExtremeIII」とか「HIGH SPEED」とかの速度カテゴリーと、データ転送速度を併記しているメーカ−です。これらに加え、さらに『XX倍率を併記』あるいは 『レキサーが持ち出した表記法であるX倍率表示はしたくない、..でも読み出し速度を強調して高性能に見せたい』のように取れる書き方をしているメーカーもあります。
SDカードのデータ転送速度に関する表記は曖昧
多くの製品では、転送速度をXXメガバイト/秒で表示する場合でも、『読み出し時の転送速度』の表示ですから、「なんだかな」という気がします。 XX倍速の表示でも同じ問題があり、その基準や条件が示されていない場合も多い。
私の買ったKingstonのように速度表記なしの製品を持っている場合。新しく50xとか133xのSDカードを買ったら、50倍とか100倍以上の速度になるんじゃないかと考える方もいるはずです。
しかし、実際はSDカードの「速度表記なしの製品」を基準しているわけではなく、表記なしでも10xとか50xとかに相当するかもしれません。その結果、数倍になるかもしれないし、それほど変化がないかもしれない。 いずれにしても、現状(2006/12)ではSDカードの速度表記は渾沌としているようです。比較するなら『同一条件下で、書き込み時の転送速度』でないと余り意味がありません。
SDスピードクラス
SDカードの速度表記の曖昧さを解消するため、新たに『SDスピードクラス』が規格化されました(2006/12記)。 SDスピードクラス表記はSDHCカードの発売と同時にスタートしましたが、SDHCカードだけでなくSDカードに対しても摘要されます。
SDスピードクラスとは? - 東芝 -
これまで、SDカードのデータ転送速度に関する表記については、各社よりいろいろな表現のものが出ていましたが、実際使用する機器で期待している性能が出るかどうかは、よくわからないことがありました。 そこで、SDアソシエーションでは、データ転送速度の目安を“SDスピードクラス ”として定めました。今後、対応機器、カード側がそれぞれ“SDスピードクラス ”を表記することで、転送速度に関するカードの選択が容易になります。
今回はClass 2、Class 4、Class 6の3種が規格化されました。
SDスピードクラス表記 スピードクラス データ転送速度の最小値、実測値 Class (2) (2) 読み書き時のデータ転送速度が最低2MB/秒 Class (4) (4) 読み書き時のデータ転送速度が最低4MB/秒 Class (6) (6) 読み書き時のデータ転送速度が最低6MB/秒
たとえば、Class 4は読み出し/書き込み時の転送速度が4MB/秒以上、Class 6は6MB/秒以上です。対応機器、カードは読み出し/書き込み時の転送速度によって、それぞれ各クラスに属することになり、製品やパッケージにどのクラスに属しているかマークを表記することになります。
東芝 Pocket Media / SDスピードクラスとは?
SDHCのロゴと、SDスピードクラス(6)の表示
SDスピードクラス表示の特徴
このSDスピードクラスによる表示を見ると、いままでの「X倍速表示」や「転送速度表示」に比べると随分遅く感じます。しかし X倍速表示や転送速度表示が『データ転送速度の最大値、おもに理論値、しかも自社調べ』であるのに対して、 SDスピードクラスの表示は「SDアソシエーションで規定された条件下で測定した結果が基準」となっており『データ転送速度の最小値、実測値』を示しますから、基準がいままでとは全く違うので直接比較することはできません。
SDスピードクラス表示は、どのカードが早いかの比較はできないため、転送速度の表記を併用した製品もあります。しかし速度の比較には不便でもSDスピードクラスによって「最小の転送速度が明確にされている」という点で、従来の表記法より信頼できると考えて良い。
東芝やサンディスクは最高速クラスのカードにのみClass6の表記をしているようです。
どのSDカードを買えば良いのか?
SDカードは非常に安価になりました。今後とも、より「大容量、安価、高速」な方向に進んでゆくことでしょう。 スピードに不安があるなら、信頼できるメーカーのSDスピードクラス表記:Class (6)の製品を買えば安心です、その他の速度表記は無視してもいい。 もし、1つだけSDカードを選ぶとすれば「東芝のSDカードClass (6)」をお勧めします。使う製品によっては「Class (4)」でも何も変わらないかもしれませんが、最初に「Class (4)」を買うと「Class (6)」がきっと欲しくなりますから...。(2008/11追記)
SDスピードクラスは速度の指標であり、品質の証ではありません。したがって「どのメーカーが信頼性が高いか?」という問題になりますが、 私は東芝、SanDisk、Panasonic、Kingstonあたりなら、きちんとした生産管理をしているだろうと期待しています。もちろん、他のメーカーでも「高い信頼性を期待できるSDカード」は、あります。しかし、SDカードを販売しているメーカーの多くが「OEM」供給を受けた製品化と考えられるため、同じメーカーの製品でも、品番が違えば「スピードや品質管理のレベルに差があるかもしれない」と考えるのが自然で、メーカー名だけで品質を考えるのは無理があるかもしれません。
注意が必要なのは「東芝」、「SanDisk」の高速なSDカードでは、有名なだけに「精巧な偽物」が存在します。信頼できる販売店から購入することをお勧めします。
SDカード 対応機器との互換性
SDHC
- SDHCメモリーカード: 4Gバイト以上の容量を実現するSDカードの上位互換規格、32GBまで対応できる。しかしSDHCカードはSDHCカード対応機器でないと使えないことに注意。SDHCカード対応機器では従来のSDカードも使うことができる。
- マイクロSDHCカード (microSDHC card): 最小サイズのSDHCカードで、microSDHC対応機器にしか使えない。ただし、電気的な仕様はSDHCカードと共通のため、サイズを変換すればSDHCカード対応機器にも使える。
SD
- SDメモリーカード: 容量2Gバイトまでの製品。ただし、SDカード対応機器の中には1Gバイトまでしか認識できない製品もある。 サイズは24x32x2.1(mm)。もちろんSDHCカード対応機器にも使うことができる。
- マイクロSDカード (microSD card, TransFlash): 最小サイズのSDカードで主に携帯電話のメモリに使われている。電気的な仕様はSDメモリーカードと共通で容量2Gバイトまで、サイズを変換すればミニSDやSDカード対応機器、及びSDHCカード対応機器にも使える。
- ミニSDカード(miniSD card): SDカードよりひとまわり小型のSDカードで、電気的な仕様はSDメモリーカードと共通のため、サイズを変換すればSDカード対応機器にも使える。携帯電話に使用された時期もあったが、現在は対応機器があまりないため、新規に買う理由はほとんどない。
MMC
- マルチメディアカード(MMC): サイズは24×32×1.4(mm)。旧規格のため新規に買う理由はない。SDカードはSanDisk社が開発したMMCの上位互換カードのため、MMCカードは、SDカードスロットで利用できる。しかしMMCスロットにSDカードは使用できない。
- マルチメディアカード、「16」の数字は16GBではなく16MB
- fab51-blog 関連記事
- キーワード検索:SDカード
- 関連記事、サンディスクと東芝のベンチマークなど
- 2009/03 :マイクロSD 14製品の速度比較
- 2008/11 :SanDisk Extrem III、4GB SDHCメモリーカードを試す
- 2008/11 :東芝OEMのSDカードと、サンディスクSDHCカードの速度
- 2008/11 :SanDisk SDHC/SDカードの転送速度 公表値
- 2008/11 :東芝 SDHC/SDカードの転送速度 公表値
- 関連記事、Lexar、Kingston などの速度表記の比較
- 2008/01 :Lexar SDカードの転送速度 比較
- 2008/01 :Kingston Micro SDの価格と転送速度 比較
- 2008/01 :Panasonic SDカードの転送速度 公表値
- 参考情報 リンク
- TOSHIBA東芝 /Pocket Media
- ニセ東芝SDHC情報ニセ東芝SDHC:SD-F04GR4W関連
- Wikipediaの関連情報:Wikipedia/SDメモリーカード
- キングストン:www.kingston.com
- CrystalDiskMarkのダウンロードhttp://crystalmark.info/download/
- ベンチマークはフリーソフトの「Crystalmark」を使えば簡単です。測るドライブを選んで「All」のボタンを押すだけ。ただし、SDカードリーダは転送速度の低い製品もあるので注意が必要。
改訂:2009/07/30
改訂:2008/11/10
改訂:2008/07/04
改訂:2008/01/19
改訂:2007/03/25
公開:2006/12/28