ASRock K7VM3 コア電圧の低電圧化改造

ASRock K7VM3にはコア電圧の調整機能も一応ありますが少々アップできるだけ... 設定範囲を広げるには改造が必要。

ASRock K7VM3 [ KM-266PRO ]

K7VM3でのコア電圧の変更は、BIOSから『Advanced/Chipset ConfigurationからOver Vcore Voltage』を選択すれば可能です。
しかし選択できる電圧は+5%、+10%のみですから、『上げられるけど下げられない』。そこで、さらに調整範囲を広げるための改造を考えます。

このマザーボードでコア電圧をコントロールしているのはL6916Dです。BIOSでの電圧調整は、たぶんこのチップがコントロールする出力電圧を一律にシフトするような方法で行われているはずです。

そこで、このL6916DのVID入力ピンを乗っ取って、スイッチで設定できるように改造します。この改造方法ならBIOSでの電圧調整と併用できますから便利です。



コア電圧の設定のしくみ

調べたところK7VM3では、CPUのVID信号は直接VRM(L6916D) のVID入力に接続されていました。マザーボードはこの5本のVID信号により定格電圧を検知し、それに従ってCPUにコア電圧を供給します。

L6916DのVID入力ピンの位置はこの写真のようになっています。ここで例によって、このVID入力ピンとGNDの間に5bitのスイッチを取り付け、CPUからのVID信号をカットすれば、すべてのコア電圧が手動で設定できることになります。

黄色のパターン
写真ではパターンが見にくいので黄色の線でトレースしてあります、また写真の黄色の丸からCPUのVIDピンに直接接続されていることを確認しています。赤のX印はVID4及びVID3用の参考カット位置。

空きパターンは何か
これらのVID信号に接続されているR35,R36,R37,RN9,R34の空きパターンは何かと探ってみると、共通のパターン側が2.5Vに接続されていることから、これらはVID信号のプルアップ用チップ抵抗(4回路集積チップ)のようです。おそらく、VRM入力(L6916DのVID入力ピン)はその内部で高抵抗ながら一応プルアップされていますから、Asrockはこれを省略しても問題ないという判断をしたのでしょう。


難しいそうと感じるかもしれませんが、やっていることは単純!
早い話が...電圧を下げたいなら特定のVIDパターンかL11ブリッジをカット。上げるには特定のVIDパターンをGNDに接続すれば良く、その組み合わせでコア電圧が決まります、それだけ。当然スイッチなしにVRM(L6916D)の入力ピンをGNDに仮接続してもOK。


コア電圧の低電圧化改造

改造方針
今回は、できるだけ素早く簡単に改造するため、BIOSからのコア電圧調整と併用することを前提にしました。
改造するのはVID3,VID4の2つだけです。スイッチを取り付けVID3,VID4の2つを手動設定にすれば定格から上下0.2V単位の変更が設定できるようになります。 今回のセンプロンのコア電圧は1.6Vですから、このCPUの場合には1.2V、1.4V、1.6V、1.8Vの電圧がスイッチで設定でき、さらにBIOSでコア電圧を5%及び10%アップができますから、一応12通りの設定ができることになります。

他のSocketAのCPUでは
この改造はセンプロンに限ったことではなくSocketAのCPUに共通です。注意が必要なのはAthlonXP-MなどのモバイルCPUを使う時は定格ではなく、マザーボード上で認識される電圧の上下0.2V単位となる点です。たとえばAXMG2600FQQ4C(XP-M2600+定格1.450V)ならこの改造で1.775V、1.575V、1.375V、1.175Vが設定できるようになります。

VID認識電圧定格電圧
[0:4]V_COREDesktopMobile
CCCCC1.850 - -
:CCCC1.825 - -
C:CCC1.800 - -
::CCC1.775 - -
CC:CC1.7501.750(M)-
:C:CC1.725 - -
C::CC1.7001.700(P)-
:::CC1.675 - 1.650(K)
CCC:C1.6501.650(K)1.600(U)
:CC:C1.625 - 1.550(H)
C:C:C1.6001.600(U)1.500(L) XP-M
::C:C1.575 - 1.450(Q) XP-M
CC::C1.550 - 1.400(V) XP-M
:C::C1.525 - 1.350(J) XP-M
C:::C1.5001.500(L)1.300(W) XP-M
::::C1.475 - -
VID認識電圧
[0:4]V_CORE
CCCC:1.450
:CCC:1.425,NX1750
C:CC:1.400
::CC:1.375
CC:C:1.350
:C:C:1.325
C::C:1.300
:::C:1.275,NX1250
CCC::1.250
:CC::1.225
C:C::1.200
::C::1.175,NX1500
CC:::1.150
:C:::1.125
C::::1.100
:::::No CPU

L11ブリッジがそのままL6916DのVIDの入力ピンにつながっているわけですから、この表自体はブリッジ設定と同じものです。 ただし今回は写真に合わせるため、通常とは違いVID[0:4]、つまりIDを左から0,1,2,3,4の順に書いているので注意してください。
スイッチの設定は黄色で示す部分で[ C=ON ]、[ :=OFF ]です。

改造

では改造、早速このようにL6916DのVID3,VID4ピンにスイッチを取り付けました、写真では巨大なDIPスイッチに見えますが普通のサイズです。CPUからのVIDパターンは上の写真のX印の所でカットしました。 こちらでは念のためプルアップ用としてR34に4.7K(472)のチップ抵抗を追加しました。

VID信号のカット

最近のCPUではVID3に対応するL11[3]ブリッジがオープン(:)になっていますから、この場合はVID3のパターンカットは省略してもまかいません。(今回はVID4のみカットしました)

↑質問をいただきました。
この記事を書いた時点で「最近のCPU」とは、市場にあるSempron及びAthlonXP-Mを示しています。その後、GeodeNXが登場(2005年2月頃)しますが、この記述には反映されていません。(誤解を生みますね、あとで修正します)

GeodeNX 1750とGeodeNX 1250のブリッジL11[3]はクローズです、このため改造する場合VID3のパターンカットは省略できません。GeodeNX 1500のブリッジL11[3]はオープンですから、この記事の通りです。とりあえず上の認識電圧の表にGeodeNXの認識電圧を赤の文字で追加記入しておきました。VIDの欄はそのままL11ブリッジのデフォルト設定として見ることができます。

CPUからのVID配線のカットはこのX印の箇所に限らず、CPUソケット裏のVIDピンから出ているパターンをカットする方法もあります。


Q&A

Q:スイッチのハンダ付けなんかできません、でもどうしても電圧を下げたいのですが....

A: VID4のカットだけで認識される電圧は0.4V下がります。写真でR34の数字の4の所にある傷がカットの跡ですが見えますか?。

この場合XP-MやGeodeNXならなんとかなりそうですが、モバイル化した倍率固定のAthlonXPやSempronでは起動または再起動できない可能性があります。 今回使ったSempron2500+では幸い起動できました、とりあえずFSB100でBIOSからコア電圧を10%アップ、可能であれば倍率も低く設定し試してみてください。

なぜプルアップ抵抗を追加したのか
スイッチなどの金属接点は「ある程度の電流を流さないと導通が不確実になる」ということになっています。L6916Dの内部のプルアップ回路では、ごくわずかな電流しか流せませんから、スイッチを使ったON-OFFを確実にするためプルアップ抵抗を追加し接点に電流を流します。 現在は、写真でわかるようにRN9にはプルアップ抵抗を追加していませんが、あとで追加する予定です。

スイッチの加工

順序は逆になりますが、DIPスイッチの足のピッチは1/10インチ(2.54mm)なので、そのままでは1/20インチピッチのL6916Dには取り付けられません。私はいらない抵抗のリードを利用してこのようにハンダ付けしたあと、L6916Dの足のピッチにあわせて曲げ、その後スイッチ本体をL6916Dにボンドで接着し、ハンダ付けをしました。


ボンドで接着?
軽いパーツでも今回のようにハンダ付け部分が2箇所程度の場合は、ハンダ付け部分に力が加わらないようにするため、パーツをボンドなどで固定します。 もし、重量のあるパーツの場合ならハンダ付箇所の数に関わらず、ハンダ以外の方法で基板に固定することをお勧めします。

2P-DIPスイッチ
2P-DIPスイッチなどという不思議な物を使っていますが、何でもかまいません。4PのDIPスイッチを使って4bit設定可能にするとか、余ったスイッチは使わないとか でも良いですね。尚、コア電圧用のスイッチは非常に重要ですから良質な接点の物を使ってください。


電圧変更テスト

これで完成です、実際にスイッチで電圧を設定しMotherboard Monitor 5とテスターでコア電圧を計ってみました。 電圧を下げることができなかったK7VM3ですが、改造で定格電圧1.6VのCPUを実測1,24V、1.4Gで動作させることができました。 この時のCPUとケースの温度差は約3度と非常に発熱が抑えられていることがわかります。 まあ、ここまで極端な電圧に設定しなくても、1.3〜1.4V程度の設定なら十分に発熱が抑えられると思います。

Motherboard Monitor 5
Sempron2500+
スイッチ
設定電圧
BIOS
電圧調整
実測1.24V 1.2Vdisabled
1.2V+10%
実測1.45V 1.4Vdisabled
1.4V+5%
1.4V+10%
実測1.61V 1.6Vdisabled
実測1.74V 1.6V+10%

CPU: SDA2500DUT3D BIXJB0427CPJW

電圧を下げるだけでなくこの改造では1,80v 10%upなどという非常に危ない設定もできますが、安価なマイクロATXにその動作を期待するほうが無理、またCPUにとっても1.8Vは危険でしょうから試していません。また、表で実測1.74Vの欄ではクロックが1465MHzになっていますが、これが限界というわけではなく、CPUの発熱を抑えるため適当にクロックを下げただけです。 0.1VでもCPUにとっては大きな電圧の差です、発熱も変わります、過電圧には注意してください。 このマザーは先のCrystalCPUIDによる倍率変更と低電圧化改造で、静かに涼しく使うくらいのほうが向いているような気がします。

このPCは友人から頼まれて作った物のため、現在手許にはありません....時は流れ2007年現在、このPCは何のトラブルもなく動いているとのことです、良かった。(2007/02)


改訂:VID信号のカットの記述にGeodeNXを追加2007/10/05
改訂:2007/02/20
追記:2005/02/11
補足を追加:2005/01/24
公開:2004/12/21