倍率変更のためのCPU改造 [ CrystalCPUID対応版 ]

このページは、起動倍率がロックされた Athlon XP において、ソフトウエアによる倍率変更を行なうための実際の改造方法を紹介しています。
この内容は Barton, Thorton, Thoroughbred, Applebred にそのまま適用できます。

起動倍率が変更できないこと、についての詳細は倍率がロックされたアスロンを参照してください。


KT400 + XP2500 + CrystalCPUID で静かなPCに

現在のアスロン XPは、マザーボードが備える倍率変更機能を使ったとしても無視され、定格倍率で起動します。このため最近の倍率変更改造は、CrystalCPUIDなどによる起動後の倍率変更を前提に考えることになります。今回はKT-400に Athlon XP 2500+(倍率固定)を載せた場合を例にして、改造ポイントの紹介をしていきます。

現在のシステム構成

マザーボードはMSIKT4V(MS-6712)で、Athlon XP 1700+ をマザーボードのOC機能を使って1.67GHzで使用。ヒートシンクは長門、冷却性能はそれほど良くないようで、ヒートシンクの温度は高め、ファンの音も気になるようです。実はこのボード、私の物ではなく、『2GHzで静かに使いたい』という方のPCを、改造のために借用したものです。

■ 問題点
  • XP 1700+は、CPUID=680のコアのため、発熱を考えると、これ以上のクロックでの動作は期待できない。
  • KT4Vでは、コア電圧の調整範囲が狭く、BIOSで設定可能なのは、デフォルトの電圧から0.025Vダウン、0.1Vアップまで。
  • BIOSは「AMI」なので、Mobile化による改造後は、L6倍率で起動することになる。
■ 改造方針
  • クロック2GHzを実現するためにCPUを交換する。ただし安価に、が条件。
  • 低いコア電圧でも使えるように、改造によりコア電圧の設定範囲を広げる。
  • ヒートシンクを冷却性能の高いと思われる物に交換することで、低い回転数でも十分な冷却が可能なようにする。結果的にCPUファンを低騒音化できるはず。

CPUのブリッジ加工

もし、Athlon XP-M 2600+を使い、定格1.45Vで2G動作をさせたとすれば、改造なしでも静かに使えそうです。このプランが最良かもしれませんが、今回はAthlon XPで『OC耐性の良さそうな製造週の製品を選び、低電圧で動作させる』という方法に賭けてみました。しかし、そう都合良く耐性の良さそうな物が見つかるとは思えません。... 実は順序が逆で、評判の良い0409週のAthlon XP 2500+ が入手できたので、テストを兼ねてこの改造に着手したというわけです。

L5ブリッジ加工 モバイル化

まず L5[2] をクローズしてMobile CPUとして動作させるようにします。私は該当部分をアルコールで拭いたあと、熱線補修材を、つまようじの先に少量つけ、ブリッジの溝をつつくようにして埋めました。このとき隣のブリッジに影響すると困るので、他の溝をセロテープで覆っておきました。また乾燥してからでないと導通しないので、この作業は前日のうちに済ませておきます。

ブリッジ・クローズについて

クローズされたままのL5ブリッジは、一方がコアに、もう一方がGNDに接続されています。またレーザー加工によってカットされた溝の底もGNDのパターンではないかと予想されています。ここで『カットされたブリッジの断面をGNDに接続できればクローズと同じ状態になる』という考え方で、溝を導電材料で埋めています。

クローズできない?

掲示版で『レーザー加工では破断面の酸化により絶縁層が形成されてしまう可能性もある』との指摘もありました。 もともと破断面を利用するという危うい方法ですから、この方法ではクローズできない可能性もあります。この場合、方法を変え、パッケージ表面を慎重に削りブリッジを露出させた後、導電材料を塗る方法を試してみると良いかもしれません。

クローズには何を使う?

もう、この話しは4年もやっているわけですが...導電材料としては、コンダクティブペンが有名です。また一般には入手しにくいものの、導電性ペーストの「ドータイト」も使えるようです。熱線補修材は製造中止のため現在入手できません。(予備をお持ちの方、譲っていただけませんか..)、 また濃いめの鉛筆の芯で溝を埋めて、安定させるためにボンド等で固めてもうまくいく、とのことですが、こちらでは試していません。金とか銀を含有した塗料のような物があれば良いはずなので、おもしろいものがあったら試してみてください。ちょっと試すくらいなら伝統の鉛筆技でも良いのかもしれません。

Athlon XP 2500+ 動作チェック

FSBや電圧を変えてのチェックが簡単にできることから、Epox 8RDA+(nForce2)を使い、8rdavcoreでFSBと電圧を変えながらテストをしました。(このときのチップセットやメモリの電圧はデフォルトのままです。)

定格コア電圧(1.65V)では、運良く500MHzアップの2333MHzでもパイ104万桁が通るという、期待通りの結果です。さらに1.35Vで、2Gが(下の表の黄色文字の部分)動作したことで、低いコア電圧での動作も期待できることがわかります。


動作クロックとコア電圧のテスト(パイ104万桁条件)
動作クロックXP2500 DKV4DXP-M2500 FQQ4CXP1800 DLT3C
-AQYHA 0409 XPMWAQXFA 0347 WPMWIQYFA 0349 XPDWJIUHB 0309 MPMW
1.83GHz (11X167)1.225v1.300v1.300v1.350v
2.0GHz (11X182)1.350v1.450v1.400v1.450v
2.2GHz (11X200)1.500v1.600v1.500v1.600v

このときCrystalCPUIDでCPU NameがAMD Mobile Athlon XP-Mと判定されているか、つまりL5[2]クローズが成功しているかどうかも確認します。

これはCPUIDの表示です、定格クロックより500MHzアップと書くと何か凄そうでも、比率で見ると27%アップにしかすぎません。OCをする場合、ぎりぎりの条件で使うとCPUやマザーの劣化を速めることになりかねませんから、まあほどほどにしておいたほうが無難です。
根拠はありませんが、私は通常パイ104万桁条件のテスト時のコア電圧より、とりあえず0.1V程度は上げて使うことにしています。というわけで...動作マージンを考え、目標を 2.0GHz 1.45V に設定し改造を進めていきます。



L6ブリッジ加工 Max倍率

FSBは使っているメモリがPC2700なので167に決定、12Xで2G起動となるようにします。 L6がすべてクローズの状態では、Mobile化した時の最大倍率は11xになります。最大倍率を12Xに設定するために L6[1] をカットしました。

[ 参考 ] Phoenix-Award BIOSの載ったマザーではL6の加工はせず、L5[1]をクローズするだけで最大倍率が24Xになるので便利です。AMI BIOSでこの方法が使えないのは24x起動となり、たとえFSB100でも起動が困難と予想されるからです。

ブリッジ・オープン

最近のパッケージ(配線が透けて見えるタイプ)では、ブリッジは金色の点ではなく、その間に挟まれた暗い色の配線のように見える箇所です。そこにレーザー加工の溝(焦げたような跡)がある状態を『オープン』、なにも加工されていない箇所を『クローズ』と呼んでいます。

ブリッジをオープンにするには、カッターで切るだけですが、切るというより刃先を浅く突き刺し表面に傷をつける、という感じです。写真ではカットした跡が小さすぎて写らないので、緑色の印(合成)をつけてあります。


コア電圧を自由に変更する

このMSIのマザーボードでは、コア電圧の設定範囲が狭いのでVIDスイッチを付けることにしました。 ただし0.025Vの調整はBIOSで可能なので、5bitのVIDのうち上位4bitだけにスイッチを取り付けています。 CPUpinからのVIDパターンを調べてみると、VIDpin→OC回路→HIP6302(VRM)となっているようです。 ここでVID配線をカットしOC回路の入力をスイッチに変えることができれば、手動設定が可能になります。しかしOC回路のVID入力ピンが特定できなかったので、配線パターンのカットをやめ、L11ブリッジをカットして解決することにしました。

[ 注意 ] コア電圧を自由に設定できるマザーボードではこの改造は必要ありません、またCrystalCPUIDの電圧変更は、この改造でも有効になりません。


L11ブリッジ加工 コア電圧 

VIDはL11ブリッジによってCPUパッケージ内部でGNDに接続されていますから、L11をカットすることでVID配線のカットと同じ効果が得られます。 スイッチを接続したVID[4:1]に接続されるL11をすべてカットし、デフォルトを1.1Vにします。スイッチをONにすればブリッジクローズと同じ効果が得られますから、CPUを交換しないかぎりこの方法で問題ありません。

Athlon VID Code 1
VIDVCC_CORE (V)
[4:0]Desktop
CCCCC1.850
CCCC:1.825
CCC:C1.800(N)
CCC::1.775
CC:CC1.750(M)
CC:C:1.725
CC::C1.700(P)
CC:::1.675
C:CCC1.650(K)
C:CC:1.625
C:C:C1.600(U)
C:C::1.575
C::CC1.550(H)
C::C:1.525
C:::C1.500(L)
C::::1.475
Athlon VID Code 2
VIDVCC_CORE (V)
[4:0]Desktop
:CCCC1.450
:CCC:1.425
:CC:C1.400
:CC::1.375
:C:CC1.350
:C:C:1.325
:C::C1.300
:C:::1.275
::CCC1.250
::CC:1.225
::C:C1.200
::C::1.175
:::CC1.150
:::C:1.125
::::C1.100
:::::No CPU

ただし今回は『このCPUを他のマザーに使った場合でも、起動できる可能性を残したい』との希望があり、 L11を1箇所カットするだけにして、デフォルトを1.25Vにしました。 スイッチはオープンになっているブリッジに接続されている部分しか有効になりませんから、この場合に操作可能なのはVID4とVID3だけで、設定可能な電圧は1.25V 1.45V 1.65v 1.85Vとなります。

参照 → VIDのピン配置

C がブリッジクローズ、該当するVIDピンはGND(0V)
: がブリッジオープン、該当するVIDピンはオープン

VID スイッチ

改造で取り付けたスイッチは、オープンになっているブリッジに接続されている部分しか有効にならない、これを理解していれば、マザーのVIDパターンはそのままで、必要に応じてL11をカットすれば低電圧の設定も可能になるはずです。
電圧設定の自由度の低いマザーボードには非常に有効ですが、設定できるすべての電圧で起動できるとは限りません。BIOSによっては起動できる電圧範囲を制限していると思われるマザーボードもあります。しかし起動できないようなL11設定にしてしまったとしても、スイッチを取り付けてあればデフォルト電圧が変更できるので安心です。

L11ブリッジのカット確認
スイッチを取り付けてある場合は、L11がカットできたかどうかを比較的簡単に確認できます。スイッチをすべてOFFにし、CPUをソケットに差した状態でスイッチの各VIDピン側とGNDが導通していなければオープン、導通していればクローズになっています。

ヒートシンク取り付け 鎌風Rev.B

ヒートシンクは、Kamakaze(鎌風)を使用しました。ヒートシンク自体はPALに似た非常にしっかりとした物で、独特の取り付け金具によってネジ2本で固定するしくみです。取付時にコンデンサ(緑の丸印)の1つと取り付け金具と間隔がほとんどありませんでしたが、なんとか取り付けることができました。



完 成

組み立て後VID-SWを1.45Vに設定しFSB133で起動しました。 CPUの温度やコア電圧の値、ファンの回転に異常がないことを確認し、そのままwinをスタートしました。特に問題はありません。再起動しBIOSからFSB167を選択し起動、とりあえず無事予定通りの2Gで起動できました。

この後、この設定で実用可能かどうか、今回は時間がないのでこちらではテストをしていません。2〜3ヶ月後にでもこのマザーの動作状況を追記しておく予定です。*追記11月23日現在、正常に動作。

Athlon XP 2500+の起動倍率は11Xに固定されていますが、AMI BIOSの面白いところは、Mobile CPUを認識した場合BIOS内のルーチンが、L6を定格として倍率変更を行なうことです。この結果12Xで動作することになります。(L6倍率はCrystalCPUIDのOriginal Multiplierの欄に表示されています。)

AWARD BIOSではMobile CPUを認識した場合でも、このような処理は行ないませんから、起動後にCrystalCPUIDなどで倍率変更を行ないます。

CrystalCPUIDでの倍率変更を今回はじめて試すことが出来ましたが、実際にみごとに倍率が変わるのを見てみると、これが意外におもしろいもんなんですね、これが動作するボードが1枚ほしくなりました。



reference
Software
CrystalCPUID > Crystal Dew World
  • 追記:2004/05/17
  • 作成:2004/05/10