Athlon Palomino コア電圧

コア電圧の設定方法と、モバイル版、デスクトップ版CPUでのVID定義の違い。

このページはPalominoコアのMobile Athlon4-900MHzがベースとなっています。
Athlon MP, Athlon XP, Duron(Morgan)については未確認。
Duron(Spitfire), Athlon(Thunderbird)とは、使われているブリッジ番号が違います。

コア電圧を上げた場合、0.1V程度でも発熱は確実に増えます、上げ過ぎた場合には製品の劣化あるいは破壊に至ることがありますので、信頼性を第一に考えれば定格での使用をお勧めします。

コア電圧

倍率を上げて安定動作をさせるためには、コア電圧を少々高くします。 この場合当然、発熱量も増えますのでヒートシンクによる放熱には十分な注意が必要です。逆に発熱を抑えるためには、倍率を下げて少しコア電圧を低くするのも効果的です。

VID信号は、CPUからマザーへデフォルトのコア電圧を渡しています。
この設定に使われているブリッジは製品の世代によって下記のように異なります。

  • L7:Athlon [Thunderbird]、Duron [Spitfire]
  • L11:Athlon4 Athlon MP, Athlon XP [Palomino], Duron [Morgan]

このブリッジは、CPUの内部で一方はGNDに、もう一方はVIDピンに接続されているため、そのショート、オープンの組み合わせがそのままVID信号となります。

左がSpitfire, 右がPalominoを採用したプロセッサのVIDブリッジです。

モバイル版のCPUでも使われるブリッジ自体はデスクトップ版と同じです、ブリッジからコア電圧を読むには図の状態で、左からVID 4, 3, 2, 1, 0となり、この順番のとき、これを通常VID[4:0]とまとめて書いています。

コア電圧

コア電圧の変更はオーバークロックに効果的ですが、定格の許容偏差は0.05V(コアによっては0.10V)程度と狭く、これを変更することは、メーカーの保証対象外の行為となりますので、御注意ください。

個人的には10%程度の変更では、極端な製品の劣化は起きないだろうと思っていますが、確かではありません。 また、同一クロックでCPUを動作させるとして、コア電圧を少々上げ限界クロックとの間にゆとりを持たせて使うより、コア電圧を定格のまま、限界クロック付近で使うことのほうが、私はより危険ではないかと考えています。

L11、コア電圧コード

PalominoコアではL11でコア電圧を設定しています、Mobile Athlon4ではさらにL7も同じ設定になっています、しかしこれはモバイル版専用のSOFT VID用ブリッジのようですから、通常のマザーでは無視されるはずです。


ブリッジの向きに注意してください、コアの文字がさかさまに見えるようにしたときの状態です。

ブリッジからコア電圧を確認する場合、モバイル版CPUではMobileの欄の値を読みます、 しかし通常のマザーでは、常にDesktop用のIDとみなしてコア電圧が生成されるため、モバイル版のコア電圧定格1.4VのCPUでも、1.55Vがコア電圧として設定されることになります。

Desktop&Mobile(Athlon4/Duron) VID[4:0] Code
VIDVCC_CORE (V)VIDVCC_CORE (V)
[4:0]DesktopMobile[4:0]DesktopMobile
CCCCC1.8502.000:CCCC1.4501.275
CCCC:1.8251.950:CCC:1.4251.250
CCC:C1.800(N)1.900:CC:C1.4001.225
CCC::1.7751.850:CC::1.3751.200
CC:CC1.750(M)1.800:C:CC1.3501.175
CC:C:1.7251.750:C:C:1.3251.150
CC::C1.700(P)1.700:C::C1.3001.125
CC:::1.6751.650:C:::1.2751.100
C:CCC1.650(K)1.600::CCC1.2501.075
C:CC:1.6251.550::CC:1.2251.050
C:C:C1.600(U)1.500(L)::C:C1.2001.025
C:C::1.5751.450(Q)::C::1.1751.000
C::CC1.550(H)1.400(V):::CC1.1500.975
C::C:1.5251.350:::C:1.1250.950
C:::C1.500(L)1.300::::C1.1000.925
C::::1.475 - :::::No CPUShutdown

C がブリッジクローズ、論理0、該当するVIDピン電圧は0V
: がブリッジオープン、論理1、該当するVIDピン電圧はVcc


VIDブリッジ加工について

ブリッジ加工で、V_COREを変えようとするときは、使用するCPUがモバイル版、デスクトップ版のどちらの場合でも、 デスクトップ用のマザーに対してコア電圧IDを送るわけですから、 必ずDesktop版のIDを使って設定します。ただしモバイル版用のマザーを使っていたら、話は別ですが....

VID、コア電圧の制限

マザーボードによっては、起動できるコア電圧が制限されていることがあります。 BIOSが制限しているか、コア電圧レギュレーターの都合によるものでしょう。
MSI K7Pro2Aで可能な起動電圧は
1.1、1.3、1.425〜1.85(V)
GIGABYTEでは、だいたい1.3v以上が起動できるようです。

L11、Athlon XP

アスロン XP、MPのVIDブリッジを読む方向の確認ができていません。これはアスロン4のブリッジから推測したものですが、海外のサイトではこの逆の順番になっています。

コア電圧を変更する

コア電圧を手動設定にするには、マザーボード上でCPUのVID信号を無効にして、SWなどで設定した値をコアボルテージレギュレータに直接渡すように変更するのが基本です。
ただし、この信号はマザー側でVcc(5V)にプルアップされて使用しているはずです。 VID信号は、多くのマザーではプルアップされて使われていますが、その電圧は様々です(2.5V, 3.3V, 5.0Vなど)、プルアップ抵抗が無効にならないように注意します。 しかしHIP6301,HIP6302のデータシートによれば、チップ内部に一応プルアップ回路を備えていますから、必ずしもプルアップ抵抗が必須というわけではないようです。


このようなSWを作成しCPUに代わってVIDを設定します。

簡単ですが、CPUのVID信号を無効にする方法が少々面倒です。
このため、CPUのVID信号は、そのままにして、このSWをソケット裏のVIDピンに配線する方法でもかまいません。 この場合、コア電圧を下げることはできませんが、全部ONにすれば1.85Vになります。


コアボルテージレギュレータはコア電圧を生成する回路で、そのコントロールをしているLSIは、HIP-6302などです。この入力ピンをSWで設定するようにすれば自由にコア電圧を変えられるはずです、マザーボードによって使っている製品が違いますから、この部分はマザーごとに対応しなくてはならないので少々面倒です。

CPUのVID信号を無効にさせるには、次の方法のどれかを使う
パターンカット
VIDピンから出ているパターンを追い、コアボルテージレギュレータの入力ピンに接続されていることを確認します。 次にソケット裏のVIDピン脇でVIDパターンをカットします。 実際の改造では、パターンカットの場所と、DIP-SW配線の接続場所の特定が難しい。
L11ブリッジの加工
L11ブリッジをすべてオープンに加工します、作業は少々難しくなります。
VIDピンカット
CPUのVIDピンをすべてカットする、お手軽で確実ですが、元に戻すことができないので....
PKOCK7-EV6
アスロン用の例の倍率変換下駄を使って改造する、テスト用には便利です。
その他
VIDピンに極細のチューブをかぶせて絶縁してしまうとか、ソケットの対応するピンを抜くという荒技も聞いたことがありますが......。
VID SW設定

VID [4:0]
電圧(V)DIP SW
12345
ID[4][3][2][1][0]
1.85CCCCC
1.80CCC:C
1.75(M)CC:CC
1.70(P)CC::C
1.65C:CCC
1.60(U)C:C:C
1.55C::CC
1.50(L)C:::C
1.45:CCCC
1.40:CC:C
1.35:C:CC
1.30:C::C
1.25::CCC
1.20::C:C
1.15:::CC
1.10::::C

C=ON , :=OFF

この表ではDIP-SWの5番、VID[0]がONに固定としてOFFの場合を省略しています。

OFFの場合の電圧は0.025V低くなります。

黄色の文字はDuron/Athlonの定格です