起動倍率が固定されたAthlon XP

AMDのSocketA CPUは、製造時期によっては起動倍率がロックされているため、マザーボードの倍率変更機能が使えないことがあります。
もちろん、定格のまま使う場合は何の支障もありませんから、以下を読む必要はありません。

以下の内容はAthlonXP及びSempron[ BartonThortonThoroughbred]、Duron[ Applebred ]に共通です。
Athlon64などの64bitの製品及び、旧世代(Athlon XP[Paromino]、Duron [Morgan])のプロセッサには全く関係ありません。

Athlon XPとAthlon XP-Mの起動倍率

2005年の時点で、販売されているAthlon XPSempron(SocketA版)、Duronの各SocketAプロセッサは、すべて起動倍率が固定されています。 参照→ 起動倍率がロックされたアスロンとは

Mobile Barton
モバイル版は例外
ただし、モバイル版のCPUである、Athlon XP-MとGeode NXは起動倍率がロックされていません。入手可能な販売店を探してみてください。 参照→ モバイル版CPUの問題点

Athlon XP、Athlon XP-M(Geode NXを含む)を使った場合、マザーボードのチップセットによって動作がどう違うのか、わかりにくいようなのでまとめてみました。例外もないわけではありませんが、ほぼ以下のようになります。



マザーボードのチップセットによる倍率変更への対応の違い

現在さまざまなチップセットが存在しますが、CrystalCPUIDなどのソフトウエアによる倍率変更を前提に考えるとnVidiaとそれ以外(VIASIS....)では大きな違いがあります。また一般にBIOSがAwardか、Amiかによっても挙動が変わりますので注意が必要です。

購入時のままの場合 [ Athlon XPSempron及びDuron ]

起動倍率は固定されています。改造やマザーのOC機能を使ったとしても起動倍率は変わりません。

普通に売られているリテールパッケージや、バルクのCPUがこれにあたります。

VIAチップセット
  • CrystalCPUIDによる倍率変更機能はデスクトップCPUのままでは有効になりません、L5ブリッジの改造が必要です。
  • Award BIOS : 定格倍率で起動します。
  • Ami BIOS : 定格倍率で起動します。
  • 改造をしなくても、FSBの変更はマザーボード側のサポートがあれば従来通り可能ですから、動作クロック自体が変えられないというわけではありません。しかし一般にFSBの変更はPCIやAGPのクロックにも影響が及ぶためお勧めできません。
nVidiaチップセット
  • CrystalCPUIDによる倍率変更機能は動作できません。
  • 倍率が固定のまま使うことになります。nForce2を搭載したボードでは、PCIやAGPのクロックを固定したままFSBの調整ができるので、FSB変更によるオーバークロックは可能です。ただし動作クロックを下げたい場合には低いFSBで使うことになりますから不満が残るかもしれません。Athlon XP-Mを購入したほうが倍率が変えられるため何かと便利です。


L5ブリッジの改造によりモバイル化 [ Athlon XPSempron及びDuron ]

起動倍率は固定されたままですが、CPUはソフトウエアによる倍率変更命令を受け付けるようになります。
VIAチップセット
  • 倍率がロックされたCPUであっても、CrystalCPUIDによる倍率変更が可能になります。
  • Award BIOS : 起動倍率は定格倍率のまま変わりません。
  • Ami BIOS : 起動時にBIOS内のルーチンにより強制的に倍率が変更されるため、L5によるモバイル化を行なった場合は、起動倍率が一律に11xに変更された後、起動します。(例外としてAsrockのマザーボードの一部で起動時に倍率が選択可能なBIOSが搭載されているのを確認しています)
  • コア電圧に影響はありません、定格通りに認識されます。ただしCrystalCPUIDによる電圧変更は反映されません。
  • マザーボードによってはCPU名が表示されない、まれに起動できないなどの障害が出る場合があります。
nVidiaチップセット
  • たとえモバイル化したとしてもCrystalCPUIDによる倍率変更はできません、Athlon XP-Mを使った場合でも同様です。このためモバイル化改造はあまり意味がありません。
  • コア電圧に影響はありません、定格通りに認識されます。CrystalCPUIDによる電圧変更も動作できません。


モバイル版のCPUを購入した場合 [ Athlon XP-M, Geode NX ]

起動倍率は固定されていません。従来通り改造やマザーのOC機能による起動時の倍率変更が可能です。
VIAチップセット
  • そのままでCrystalCPUIDによる倍率変更が可能です。
  • マザーボードにオーバークロック機能があれば、それを併用することもできます。
  • Award BIOS : 起動倍率は5x6xになります。(モバイル版のデフォルトの起動倍率です)
  • Ami BIOS : 起動時にBIOS内のルーチンにより強制的に倍率が変更されるため、例えば14x,15xなどの本来の定格倍率に変更された後、起動します。(例外としてAsrockのマザーボードの一部で起動時に倍率が選択可能なBIOSが搭載されているのを確認しています)
  • コア電圧は自動認識では正しい値に認識できません。また、CrystalCPUIDによる電圧変更は反映されません。
  • マザーボードによってはCPU名が表示されない、まれに起動できないなどの障害が出る場合があります。
nVidiaチップセット
  • マザーボードにオーバークロック機能があれば、それを使って倍率が変更できます。
  • CrystalCPUIDによる倍率変更、電圧変更はできません。
  • Award BIOS : 起動倍率は5xか6xになります。
  • コア電圧は正しい値に認識されませんから、マザーボード側の電圧変更機能が必要です。
  • マザーボードによってはCPU名が表示されない、まれに起動できないなどの障害が出る場合があります。


モバイル版CPUの問題点

Athlon XP-M(モバイル版)はノートPCなどの搭載用として出荷されている低消費電力タイプのCPU、またGeode NXは組み込み用のCPUです。このため通常のAthlonXPのようにリテールパッケージでの販売はなく、パッケージのない『バルク』でのみ入手できます。しかしモバイル版のCPUは通常のマザーボードではサポート対象になっていませんので動作に支障がある場合があります。

起動倍率は一律に5Xか6Xになります、コア電圧も自動認識では定格電圧ではなく、やや高めに認識されます。 それでもデスクトップCPUよりは電圧が低めのため、そのまま使ってもかまいませんがマザーボード側の電圧変更機能があると便利です。 またBIOSでAthlon XP-Mと表示されないとか、起動できないということも考えられますので注意が必要です。

このような問題があるものの、設定豊富なマザーボードであればコア電圧や、倍率を手動で設定することにより定格で使えるようです。また倍率に関してはCrystalCPUIDを使えば多くのマザーボードで変更可能です(nVidiaチップセットを除く)が、このソフトでは電圧変更はできません。

Thoroughbred ID=681 や Bartonをコアに持つAthlon XP-Mの場合は、比較的低電圧でも高いクロックでの動作が期待できますが、 Thoroughbred ID=680のAthlon XP-M、Mobile Athlon 4[Paromino]、Mobile Duron[Morgan]などの旧世代のモバイルCPUでは、現行のSempronやAthlon XPに比べて性能が劣るため、デスクトップ用のSempronやAthlon XPを改造でモバイル化し、電圧を手動設定にして使ったほうが同一電圧なら、より高いクロックで動作できそうです。

上でVIAチップセットと書いていますが、実際には以下を含みます。
  • VIA : KL133, KLE133, KT266A 以降(KT133A、KM133での動作は不明)
  • SiS : SiS735, SiS740, SiS748...
  • ALi :
  • ATI : RADEON 320.
  • AMD : 760MP,760MPXでも可能ですが、マザーベンダーごとに状況が違い、安定するとは限りません。(CrystalCPUID3.5以降)
nVidiaチップセットとは
  • nForce2 Ultra400
  • nForce2 IGP
  • nForce2
  • nForce420D

詳しくはソフトウエアによる倍率変更のページを御覧ください。



記事 2003年2月

起動倍率がロックされたアスロンとは

SocketAプロセッサでは、およそ2003年の秋以降(もちろん2004年も)に出荷されたAthlon XP, Duronから倍率が固定されています。 どんな方法で倍率がロックされているのかは不明です。また、ブリッジ加工や改造でそれを解除する方法も判明していません。 もともと倍率の変更は、データシートには記載されていないピンを使うことで可能となっていたため。これができなくなったとしても仕方のないことかもしれません.... しかし非常に残念です。

これを確実に見分ける方法はありません。OC FORUMSによれば製造週(date code)が2003年の35週、38〜42週あたりが混在、43週以降のほとんどがロックされているとのことです。しかし国内では43週以降のThoroughbred、Applebredでも倍率変更ができた、という連絡もあり例外もあるようです。

製造週(date code)の情報
OC FORUMS : 2003 week last unlocked Barton was manufactured
OPN 0347

試しに0347、つまり47週のAthlon2500+を買ってみましたが、倍率は予想通り変えられませんでした。当初私は『L1からの配線を内部的にでもカットした程度かと、それほど深刻には考えていませんでした。しかし実際に試してみると、何をやっても見事に定格で立ち上がってきます。

どうやらAMDは本気で倍率をロックしたようだ

これらのCPUでも、見た目には従来の製品と何も変わっていません。L1ブリッジもクローズされたままです。しかし『L3ブリッジを加工しても起動倍率が変えられない』という決定的な違いがあります。つまり、この倍率がロックされたCPUに対して、ハードウエア的なアプローチで倍率を変えようとしても、まったくの通用しません。たとえば以下の方法も無力です。

  • L3ブリッジ加工:クローズ、オープンとも倍率に影響なし
  • L3付近の改造:集積抵抗を2つはずしても、倍率に影響はでなかった
  • マザーボードの倍率変更機能:スイッチやBIOSによる設定。
  • BP_FIDピンの電圧操作:スイッチなどを取り付ける改造。
  • 倍率変更関連の製品:PK-OCK7、XP-TMC、PL-AXP、SSA-1などのすべて

倍率が固定されたCPUには、2つのタイプがある
SocketAプロセッサでは2000年の発売時から2003年秋まで、起動倍率がロックされたことは一度もありません。 2000年から発売された初代のCPUコアであるアスロン(サンダーバード)や次のパロミノでも、購入時のままでは起動倍率の変更はできませんから、これらも「倍率固定」と呼ばれる場合もあります。しかし、これらのCPUは起動倍率変更に深く関係するL1ブリッジが切断(L1オープン)されて出荷されているだけで、そのL1ブリッジを接続(L1クローズ)すればマザーボードの機能によって起動倍率が変えられるようになります。これらも倍率ロックには違いありませんが、解除が容易なため通常「倍率ロック」とまでは呼ばれません。またより新しいサラブレッドコアではL1クローズのまま出荷されたため、そのままでマザーボードの機能によって起動倍率が変えらました。

このページで扱っている2003年秋以降の「倍率ロック」というのは、このL1ブリッジによるものとは全く違い、L1ブリッジはクローズされたま(電気的にも接続されている)なのに起動倍率が全く変えられないCPUのことです。これらのCPUはどのような方法を使っても起動倍率を変更することはできないため、速度を変更するためには起動後にソフトウエアから倍率変更を行うか、FSBを変更するくらいしか方法がありません。海外ではL1による倍率固定と区別するため、2003年秋以降の倍率が固定されたCPUを「スーパーロック」という呼び名で区別しているようです。

モバイル版のCPUは例外

SocketAプロセッサでもモバイル版のCPUの場合は状況が違い、発売時からL1ブリッジが(切断)されて出荷されたことはありません。またこのページで扱っているような倍率ロック(スーパーロック)もされていませんから、Mobile DuronからGeode NXまで、すべてのモバイルCPUにおいて倍率の変更が可能です。



reference
関連記事
OC FORUMS
: 2003 week last unlocked Barton was manufactured


更新:2008/02/12
更新:2005/07/22
更新:2004/09/26
更新:2004/07/12
Athlon XPとAthlon XP-Mの起動倍率:2004/07/12
起動倍率がロックされたAthlonについて:2004/02/06